母親が亡くなった。この人に育てられている時は逞しく頑丈な母親に思ったものだが、こうもあっけなく病気にかかって逝ってしまうとは見た目よりも内臓がボロボロだったのかもしれない。
僕は母親に育てられた。祖父母は僕が物心つく前に亡くなっていたそうで、母親は文字通り女手一つで僕を育ててくれた。当時はそんな言葉はなかったが、いわゆるシングルマザーだ。
父親については存在すら知らない。まあ、僕も子供だったので周りの友達には父親がいるのに、なぜ自分にはいないのか?とモヤモヤしたこともあったが、何となく父親のことは聞いてはいけない気がしていた。だから父親に関する手掛かりは、成人式の日に着飾った僕を見てしみじみと「父親に似なくてよかったわ」とつぶやいた母親の言葉だけだ。
葬式については母親の知人の女性が取り仕切ってくれた。僕は全く存じ上げなかった方だが、古くからの付き合いだったそうだ。そして、その人から僕は母親の真実を聞くことになった。
母親は若い頃に今でいうパパ活をしていた。そこで行きずりの男に子種を植え付けられて生まれたのが僕らしい。
お金を支援してくれる人との出会いはオンラインで実現する
母親は養育費を稼ぐために、仕事が終わった後はパパ活を続ける生活をしていた。シングルマザーのパパ活である。
昼は仕事、夜はパパ活。シングルマザーのパパ活なんて想像するだけで苦労を感じる。そんな母の命を削って僕は育てられたのだ。
決して辛いとか苦しいとか言わずに僕に接してくれた母親の思いに胸を熱くしていると、母親の位牌に手を合わせながらその人は言った。
「会ってみる?あなたの父親に」
この人は僕の父親を知っているのだろうか。だが、母親が父親の存在を否定した以上、僕には父親はいない。今更父親を名乗られても僕にはどうしようもない。僕はその人の申し出を丁重に断った。
「わかった。何も言わないでおく。あなたのようにあの人も新しい人生を歩んでいるんだからね」
涙がこぼれそうになったらしいその人が嗚咽を堪えるように空を見上げた。
そこにはなぜか女性には存在しないはずの喉仏があった。
ぽっちゃり掲示板
お金を恵んでくれる人
前へ|次へ