もし、割り切りの真っ最中に女の子が急死したらどうしよう?
僕はベッドの傍らで薬を飲んでいるユリちゃんを見ながら思った。ユリちゃん曰く、心臓に病気があって服薬は必須なのだと言う。さすがに明日に死ぬようなことはないにせよ、自分は永くないんだろうなと悟っているらしい。
ユリちゃんとは割り切り掲示板で出会った。その通りに複数の男性と割り切りをやっている女の子だ。どうせ永い命じゃないんだから、会社勤めに縛られず割り切りで効率よく生活費だけ稼いでひっそりと生きていきたい、なんてことを言っている。どうせ死ぬのだからお金で抱かれることは抵抗がないし、生きている間に何をやっても、死んだらきれいさっぱりだから、と開き直っている。
はっきり言って、ユリちゃんが死のうが生きようが僕にとってはどうでもいい。相手の生活に干渉しないことが割り切りの原則であり、だからこそ彼女も割り切り掲示板で相手を探しているのだろう。だから、僕も話の聞き役はするが、特に何も言わなかった。言ってしまえば、そこで割り切りではなくなる。つまり、割り切れなくなってしまうことは明白だからだ。
セフレの作り方
心配することはただ一つ、行為の最中に心臓発作などで死んでしまったらどうしよう?と言うことだけだ。少なくとも、世間体を考えれば割り切り掲示板での出会いは、売春に近い行為だ。法律の対象になるかはともかく正当な行為とは言えない。事が公になれば僕もただでは済まないだろう。かと言って、そのまま放っておくわけにはいかない。
彼女とは愛し合っていた仲でした、とでも言おうか。僕は独身なのでそれは通用する。恋人同士の正当な行為だ。割り切り掲示板での出会いだったところまで探られることはない。死人に口なし、という言葉はそのためにある。僕はユリちゃんを愛していることにすればいいのだ。彼女が亡くなっている以上、検証されることはあるまい。
ただし、それには生前にユリちゃんの同意は欲しい。だから、僕は言っておいた。「死んだら僕の恋人になってくれる?」すると、ユリちゃんはきょとんとしていたが、やがてこう答えた。
「うーん、死んだら考えてみる」
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